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大人も楽しい!リニューアルオープンした浜松科学館

浜松ものづくりプロジェクト運営事務局

今年(現在:2019年)の7月、浜松科学館がリニューアルアープンした。
展示も一新し、話題を呼んでいる。
今回のリニューアルに伴い、コンセプトになったのは、「自ら考え、対話し、行動する、【科学×挑戦】の活動基地」だ。
科学館というとターゲットは子どもという印象だが、細部にこだわった展示は、知れば知るほど大人も魅了されるものになっていた。

 

テクノロジー × サイエンス

モーションセンサー

YouTubeでバーチャルキャラクターをつかって動画配信を行うVTuberが若者の間で人気だが、モデルの動きをトラッキングしているのがモーションキャプチャーの技術だ。

浜松科学館の展示でも、モーションキャプチャーの技術が遺憾無く発揮されている。

こちらの展示は、RGB(PCや液晶モニターの色の仕組み)やCMYK(紙媒体などの印刷の色の仕組み)を学ぶ塗り絵ゲームだ。
画面下にモーションキャプチャーのセンサーが取り付けられており、両腕を広げる、両腕を上げる、両手を狭めるなどのユーザーの体の動きによってギミックが発動する。

Xboxのモーションセンサー

こちらも同じく、モーションセンサーを使った展示だ。
楽器が演奏できなくてもセッションを楽しめる、という展示で、両手の動きをセンサーで読み取り音程を奏でる。
メロディーパートを試してみた。
右手の動きでメロディーを演奏し、左手の上げ下げでビブラートがかかる。
担当するパート(例えば、ベース、リズムなど)によって演奏方法が違うが、どれも直感的に演奏できるようになっている。
「未来のライブパフォーマンス」の新しいのスタイルとして楽器なしでコンサートを行うことになるのだろうか。本当にそうなる日が来るかも、と思わせてくれるような体験だった。

こちらは、映像技術が学べる展示。
一般的なデジタル画像(カラー)や、人間の目には見えない赤外線を撮影できる赤外線画像、自動車の自動ブレーキシステムなどに使われる距離を計測できる距離センシング画像などを見比べることができる。さらに、骨格の位置を確認できる骨格解析によって、バーチャルキャラクターを動かし、センシング技術を体感。

アプリを使ったサービス

博物館や美術館に行った時、展示を解説してくれる音声ガイドの貸し出しをよく見かけるが、浜松科学館では新たに公式スマホアプリを開発し、その中で解説などのコンテンツを充実させている。

アプリをダウンロードし、起動させた状態で「コンパスポイント」にかざすと展示解説やAIとの会話を楽しむことができるという仕掛け。

コンパスポイント

コンパスポイントは約60の展示アイテムごとに設置されている。

図像付きの解説

コンパス君が疑問を引き出してくれる。

さらに各展示ゾーンの「ベースステーション」という端末で、クイズに答えることでポイントをゲットすることができる。

6段階のランクが用意されており、クイズに正解するとポイントが加算される。ポイントが、決められたしきい値を越えるとランクが繰り上がる仕組みだ。

 

歴史に触れる展示

1986年(昭和61年)にオープンした浜松科学館。オープンから今年で33年目になる。
前身の浜松市児童会館の時代も入れると、今年で57年目だ。

プラネタリウムホワイエで興味深い展示があった。
浜松市児童会館時代に使用されていた興和製のプラネタリウム投映機だ。
興和はあの興和株式会社。キャベジン、キューピーコーワ、バンテリンなど健康・医療関係のイメージの強い会社だが、一時期プラネタリウムの投映機をつくっていた時代があったそうだ。
このような保存状態で保管されているものは珍しく、全国からこの投映機を目当てに訪れる客もいる。

ちょっと変わった展示というところでは、こちら。
なんと、浜松市に落ちた隕石なのだそうだ。笹ヶ瀬隕石と名付けられたこの隕石は、江戸時代に落下したと推測される。浜松市東区の増福寺に「玉薬師如来」として長らく保管されていたが、県の天然記念物になり、科学館で保管されるようになったそうだ。

 

ランドマークの建物

浜松科学館といえば、独特のデザインの建物を思い起こす人も多いだろう。
新幹線の窓からも見ることができる、建物を囲うように設置されたカラフルな配管の建物は、浜松のランドマークだ。
リニューアルにあたって、「リニューアル?じゃあ、あの配管は撤去されちゃったの?」という声が聞かれたが、建物自体は元の建物を有効活用しているため、我らがランドマークは現在も新幹線の窓から眺めることができる。

建築デザインを手がけたのは建築家である、仙田 満氏。児童向け公共建築を多く残しており、当館もその中のひとつだ。

仙田氏が建築した「科学館」は全国で10箇所ほど存在している。その建物に共通する特徴がいくつかあるそうだ。
まずは、環状の要素。

今回のリニューアルでは、その建物の特徴を上手く利用していている。
建物の真ん中、中二階に「みらいーらコア」と名付けられた巨大なステージが設けられている。

ここ、「みらいーらコア」では、サイエンスショーや週替わりのワークショップを楽しむことができる。
テクノロジーを駆使した展示も人気だが、「人と関わることで得る体験」を大切にしている当館らしい造りになっている。

もう一つの特徴は、屋内アスレチック。階段の他に、アスレチックで遊びながらフロアを移動できるようになっている。
私の運動不足の身体では、腰を痛めそうだったので遠慮したが、子ども達が楽しそうに登って行ったり降りてきたりする様子が微笑ましかった。

階段横の屋内アスレチック

 

浜松ならではの展示

浜松科学館ならではの、地元の研究者や企業が出展している展示は「大人が楽しい」見所の一つだ。

リニューアル前の展示にも、地元の企業が出展しているブースはあったのだが、今回のリニューアルで展示が一新。さらに、魅力が増したので紹介したい。

まずは、地元の研究者による研究を紹介するコーナー。

ここは「バイオミメディクス(生物模倣)」の研究を紹介するコーナー。
バイオミメディクスは生物の優れた機能や体の構造をものづくりに生かし、新たな技術を開発する研究だ。身近なところでは、オナモミという植物の実のイガの構造をまねたマジックテープや蓮の葉の構造を模倣した撥水性の高い傘などがある。
このコーナーは、浜松医科大学の針山特任教授の監修でつくられたそうだ。針山教授は「ナノスーツ」の共同開発者でもある。
ナノスーツとは、化学コーティング技術。極小の生物の細部を観察するのに、電界放射型走査型電子顕微鏡という真空環境で電子を反射させて見る顕微鏡を使う。その際、真空状態により生物の水分が蒸発してしまい、本来の形を保てない。そのため、乾燥処理を行うが、その乾燥処理をすると化学物質で表面が変化してしまうのが問題だったそうで、このナノスーツにより真空状態でも水分の蒸発を防ぐことができるようになり、本来の姿を観察できるようになったのだそうだ。

さらに、地元出身のノーベル受賞者といえば、天野浩氏だ。
浜松科学館の名誉館長でもある天野氏。ノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオードの研究についての展示も常設されている。

天野先生ヒストリーパネル

さらに、今年(現在2019年)の8月には当館のリニューアルオープンを記念した天野氏を講師にしたトークショーや青色LEDを使ったワークショップも行われる予定だ。(天野浩名誉館長トークショー | 浜松科学館:https://www.mirai-ra.jp/event/2266/

次に、企業によるコーナーを紹介したい。

こちらは、東京に本社を構える日機装の深紫外線LEDの技術を紹介するコーナー。天野氏も研究に携わっている。

従来のLEDでは作り出すことのできなかった紫外線の中でも波長の短い深紫外線をつくりだすことに成功。
深紫外線LEDは、水の殺菌や空気の浄化などに活用される新技術だ。

こちらの展示では、愛知県の豊田合成の技術が使われており、畜光材料を塗った壁に光で絵を描けるようになっている。赤、緑、青のLEDライトが用意されており、光の強い青色のみで描画できる仕組みだ。

同社は、太陽光に近い色味を実現した太陽光LEDや、深紫外LED光源モジュールなどを開発している。(LEDスペシャルサイト | 豊田合成株式会社 :https://toyodagosei-led.jp/

各ゾーンに配置された偉人パネル。
光のゾーンには、世界初のテレビ実験を成功させた高柳健次郎と光電子増倍管を発明した堀内平八郎のパネル。

「イ号テレビ」の送像装置

「イ号テレビ」の受像機

堀内平八郎が設立した浜松ホトニクスが協力している、スーパーカミオカンデについての展示があった。

岐阜県の神岡鉱山のなかにある観測施設「スーパーカミオカンデ」で、梶田隆章氏率いる研究チームがニュートリノという素粒子の研究をしている。2015年のノーベル賞受賞を覚えている方も多いだろう。
通常、身体を通り向けてしまうくらい小さなニュートリノだが、時折、水の分子にぶつかって反応し微細な光が生じる。その光を検出するために欠かせないのが、浜松ホトニクスの光電子増倍管だ。

光電子増倍管

VRでスーパーカミオカンデの内部を覗くことができる

新技術コーナーでの期間限定の展示では、二つの企業が出展。
CPUやメモリを含む大規模集積回路(LSI)や高輝度LEDを生産するローム浜松。

IC(集積回路)の中はどうなっているのか、どうつくられるのかが学べる。

ミクロの視点になってアナログ、デジタル、パワーの三つの世界を旅するゲーム。
電気回路の部品であるL(=コイル)R(=抵抗器)C(=コンデンサ)のフットパネルを使い、減速ポイントを避けるこのゲームは、自分が電気回路の中を移動する電子になったかのような体験ができる。

スコアが単位がナノメートルなのがいい

その向かいのブースでは、自動車、オートバイ、航空機などの乗り物や人工衛星の精密部品の設計・開発・製造を行う原田精機工業。

当社が開発した探査車両。自動車づくりのノウハウを結集して開発されたというローバーは月面だけでなく、地球でも活用できるように改良されている。「4輪で動くもの」をコンセプトにしており、自動車産業の盛んな浜松らしいアイディアだ。

原田精機工業では、宇宙開発の分野も力を入れており、自社で超小型人工衛星の研究も行なっている。
弊社の代表・岩田彰人が、さまざまな業界のキーパーソンと対談するメディア「tsukuru * hito (ツクルヒト)」にて、代表の原田浩利氏に詳しくお話を伺っているので、ご興味のある方はぜひご覧いただきたい。

浜松といえば、音楽の街でもある。
浜松を代表する楽器メーカーの展示もご紹介する。

まずはローランドのブース。
ドラム、キーボード、マイクが設置してあり、その音と連動してモニターの映像が動くというもの。
楽器によって、映像に及ぼす変化が違い、見事に楽器音のイメージを具現化しているので、それぞれを演奏して見比べてみると面白い。

次は河合楽器製作所。
ピアノのハンマーが弦を打つ様子を観察するための巨大模型。

グランドピアノよりも小型のアップライトピアノの仕組みで、模型は手前の巨大鍵盤を押すことができ、巨大なパイプ(弦の代わり)をハンマーがたたく様子をみることができる。

最後はヤマハ。
二手に分かれており、こちらは効果音のレコーデングを体験できる部屋。
最後に実際に自分が鳴らした音のついたアニメーションを鑑賞することができる。

もう一つは、ヤマハのスピーカー技術の凄さを体感できる。
洞窟、教会などの異なる環境での音の鳴り方をスピーカーで再現している。

  • 左:YAMAHA創業者 山葉寅楠、右:KAWAI創業者 河合小市
  • Roland創業者 梯郁太郎

機械の仕組みを体感できる力のゾーンで目を引いたのは、スズキの展示。

自動車、バイク共に本物の車両を使ったドライブシミュレーターが人気だ。
新型ジムニーの展示では、凸凹な険しい道を走行できるボーナスステージが体験でき、臨場感抜群で(本当に車体が揺れているような感覚がする)、普段自動車を運転している大人でも楽しむことができた。

こちらは、本田技研工業のブース。
F1スポーツカーのエンジン開発を行うホンダらしいミニカーレースの展示だ。

ヤマハ発動機からは、電動アシストのパワーを実感できる綱引きゲームと船外機も取り扱う同社ならではの船を運転できるシミュレーションの展示。

  • ヤマハ発動機創業者 川上源一
  • ホンダ創業者 本田宗一郎
  • スズキ創業者 鈴木道雄

お土産コーナーでも、こんなものを発見。
規格品の他にも、医療用のネジなどを取り扱う橋本螺子の「ねじブロック」と「ねじカンロボ」(ねじブロック:http://neji-block.com/ )。

みらいーら仕様のねじカンロボ

ほッと編集後記 ほッと編集後記

「アクティブラーニング」という言葉をご存知だろうか。
教育業界では着々と浸透してきているこの言葉だが、「学ぶ者が自ら課題を探し、自らその解決のための答えを探ること」を目指す教育方針のことを指す。
浜松科学館の展示も、この「アクティブラーニング」をテーマにしている。 体験型展示ともいえる、インタラクティブな働きかけは新しい展示の形である。

「モノからコトの消費へ」という言葉を最近よく聞く。
消費者の傾向が、モノを所有することから、“コト”、つまり、体験や経験を重視する方向へと変化している。

教育業界に限らず、こういった体験を重視したサービスはどこの業界にも求められている。
自社のサービスをアピールするのに、言葉で説明するよりも体験してもらった方が消費者には強く響くものだ。業界や取り扱っているものの違いはあれど、ぜひ参考にしたいものだ。

また、展示を通して、浜松の企業の幅広さや新技術による新しい世界のきざしをみせてもらった。これからの新技術の普及が楽しみだ。


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