浜松のものづくりを盛り上げるWEBサイト

  • トップ
  • 鉄に命を吹き込むアイアン作家。アイアンクラフトじんぱち

鉄に命を吹き込むアイアン作家。アイアンクラフトじんぱち

浜松ものづくりプロジェクト運営事務局

 

アイアンクラフトとは?

金属の素材を曲げたり、切ったり、叩いたり、溶接したりと加工し、自由にものをつくること。
手作業でつくられるアイアンクラフト製品は、工業製品というよりは工芸品やアート作品として扱われています。基本的には、一点もののため、オーダメイドでつくられることが多いです。
アイアンクラフト製品の中で私たちが目にしたことのある代表的なものは西洋の庭のフェンスや洋館の門扉に施された装飾だと思います。西洋においてその歴史は古く、諸説ありますがルーツは紀元前3500年前頃のエジプトなんだそうです。実用性もあり、装飾性に富んだアイアンクラフト製品は多くの人に愛されてきました。現代でもその人気は衰えず、現代風なデザインを加えた家具や日用雑貨のようなアイアンクラフト製品も人気です。

ハンドメイドのアイアンクラフト製品は、職人さんやアーティストの方々から生み出されています。
浜松にもアイアンクラフトを扱うアーティストの方がいらっしゃるんですよ。

浜松市西区にある工房、じんぱちISAJI FACTORYで活動している鈴木良治さんの制作現場を見学してきました!

アイアンクラフト じんぱち
代表

鈴木 良治ryoji suzuki

 

ドキドキの工房見学

鈴木さん
今、パーゴラというお庭などで植物を絡ませるための屋根のようなものを製作中です。
ベンチとセットで依頼を受けたのですが、ベンチは既に完成しています。

完成したベンチ

素敵なベンチ!お客さんの要望とアーティストとしての表現を両立させるのって大変そう!そもそも、オーダーメイドってどのようにして作られるのでしょうか?

制作フロー

どんなオーダーを受けてつくるんですか?「バラのベンチ」とかお題をもらったりするんですか?
鈴木さん
お客さんによってつくるものも違うからオーダーは人それぞれ。このベンチの場合は、木のベンチがもともとあったんだけど、それが雨風でボロボロになってしまって新しいベンチをつくりたいと僕に依頼があったんですよ。
どういったものがほしいか、などのすり合わせが大変そうですね。
鈴木さん
最初はサイズ、用途、どういう風にしたいかを聞きます。
それをもとにデザインを練って、絵にします。
下絵みたいなものがあるんですね。

こちらがお客さんに提案するデザイン画

鈴木さん
デザイン画を提出したら、ご予算と相談して仕様を固めていきます。
見事に再現されてますね。下絵なんだから当たり前だけど、絵の中からベンチを取り出したみたい。
鈴木さん
よく見ると、下絵とは違うところもあるんですよ。
え?どこ?

下絵と異なる箇所を探せ!

あ!ツルが足されてる!
鈴木さん
つくっている時にこうした方がいいと思う場合はアレンジを加えることもあります。
バラのツルの流れが斜め上から下へ繋がっていくほうが全体の流れが生まれるから。
下絵より素敵になってますね。柔らかい雰囲気が増した気がします。
ここもかっこいい!実物の方は、よりディテールに魅力がありますね。
鈴木さん
下絵の雰囲気を守りつつ、今作っているものをよりよくできるように心がけています。
 

制作現場を見学

鈴木さん
今、制作中のパーゴラにバラの飾りをいれてほしいという要望がありましたので、今日はそのためのバラの花と葉をつくります。

型を写す

鈴木さん
まずは、鉄板に型を写します。型は大きいバラ用のものと小さいバラ用のものがあります。

鉄板にチョークで型をなぞります。バラの花びら一枚一枚を溶接でくっつけているのかなと予想していましたが、どうやら違うみたい。ここからどのように、バラになっていくのか楽しみです。

プラズマ切断機で下書きに沿って切る

噴射する空気に放電することで鉄などの硬い物質を切断する仕組みのプラズマ切断機。
私もじんぱちさんのワークショップで体験しました。「ノズルの角度を垂直にまっすぐ保ち、かつ、ノズルを動かすのが早すぎると鉄が溶け切らず切断できない、ゆっくりすぎても切断面が少しいびつになるので一定のスピードで切る」のがコツという代物。世の中にある「一見簡単そうに見えて、やってみると案外難しいこと」のひとつがこれです。

プロだから当然といえば当然だけど、上手だ…
同行スタッフ
そういえば、ドアベルつくってましたもんね。いびつなのツリー。
失礼な!それが味になってるんですよ!

私が初めてつくったツリー型ドアベル

プラズマ切断機でアイアンドアベルをつくる

プラズマ切断機で"アイアンドアベル"をつくる

関連記事を見る

バリ取り&研磨する

磨くだけで随分ツヤが出るんですね。生まれ変わったようにピカピカになっています。

まめ知識工具を付け替えて便利!ディスクグラインダー

グラインダーとは、研削するためのマシンのことを指します。研削とは砥石で削って表面を滑らかにすることです。備え付けである研削盤(回転する砥石に加工したいものを押し付けて研削するマシン)より手軽に自由に使えるのが、ディスクグラインダーです。

なるほど“ディスク” グラインダー。 こうしてみるとCDみたい

切断用、荒削り用、仕上げ用など目的によって先端工具を変えます。
先端工具の種類も様々で、ディスクの形のものの他にも、ブラシの形をしたものもあるんですよ。先端工具の素材も加工物や用途によって変わります。砥石の他にもフェルトやナイロン、布ヤスリなどの種類があります。

  • 研削用
  • 切断用
  • 研磨用

真ん中に穴を開ける

全てのパーツにボール盤で真ん中に穴を開けます。

先ほど開けた穴に芯に通し花びらを重ね、溶接する

花びらをつくる

全てのパーツにボール盤で真ん中に穴を開けます。

充分に熱し、赤くなった花びら。

鉄はしばらくすると冷めてきてしまうので、手早く、かつ丁寧に形をつくっていきます。

徐々にバラになっていく…!

熱された鉄の花びらは、赤くなり冷めて色が消えるまでのつかの間、本当のバラの花びらになったみたいに見えます。

芯を切断し、茎をつける

バラの形に造形し終わった後、余分な芯を切り落とします。その後、溶接で茎をつけます

茎を溶接する

ちなみに、溶接は半自動。手元のトリガーを引くとこんな風に芯がニュルッと送り出されます。

花のガクをつくる

花びらと同じように熱しては形をつくり、を繰り返します。

完成!

形のチェックをする鈴木さん

バラになってる!!

バラに命が灯る瞬間

 

風合いをだすために

鈴木さん
葉っぱは叩いて風合いを出します。
叩く?
鈴木さん
このままだとまだまだ鉄板のままだから
(そのままでも葉っぱにみえるけど、もっと?)

このままだとまだ鉄板のまま?

カンカンカンといい音が響く

何度か叩き、曲げたりなど少し造形すると…

鈴木さん
さっきの鉄板切っただけのものに比べると葉っぱになってるでしょ?
グッとリアルになりましたね!確かに葉脈の凸凹感に雰囲気が出てる。
鈴木さん
この手間がないと出来上がりがつまんない雰囲気になってしまうから、大変だけどこの工程を何度も繰り返してつくってます。
一枚一枚に手が込んでますね。このディテールのこだわりが作品全体の魅力になっていってるのですね。

鉄の面白さ

 
鉄の魅力ってどんなところですか?
鈴木さん
魅力か〜。鉄は加工した時に面白いところが魅力かな。
面白い?
鈴木さん
加工性があるんです。すごくエッジの効いた直線的な加工もできるし、優しいラインをつくることもできる。加工によっていろんな表情を見せてくれます。

金属によっても、持っている性質が違うとのこと。銅は、一度炙れば時間が経って冷めてしまっても柔らかいのだそうです。ただ、銅は叩くと固くなります。鉄は、炙って柔らかくなっても冷めたら固まります。ステンレスは鉄の仲間ですが、炙っても鉄ほどは柔らかくはならないそうです。性質の違いってそんな明らかな違いがあるのですね!面白いです。

鈴木さん
鉄じゃないと、今やって見せた細工はできないんですよ。
個性豊かな金属の中で、なぜ、鉄を扱おうと思ったんですか?
鈴木さん
最初に鉄に出会ったから鉄をやってるだけで最初の出会いが木だったら木をやってたかもしれないですよ。

ご実家が甚八工業という鉄工場を営んでいたという鈴木さん。幼い頃から、鉄に親しんで育ったそうです。工房の名前もここからきていたんですね。

鈴木さん
鉄の魅力も活動をしていく中で感じるようになっていった、という感じです。
ほッと編集後記 ほッと編集後記

鉄ってこんなに自由度高いんだというのを目の当たりにした取材だった。
鉄板や鉄の棒がみるみるうちに、柔らかく造形されていく様が面白く、ずっと見てられると思った。   特に、バラの花の造形は鉄のパーツから、燃えるような赤いバラになり、赤いバラから徐々に鉄の質感に戻っていく様子が、まさにその瞬間に命が封じ込められたように見えて非常に感動した。
同僚に「まるで魔法みたいだった!」と興奮して報告したが、“みたい”ではなく、あれは「職人技」という本物の魔法を見たのだ。


この記事を投稿した人

投稿者アイコン

コメント

アイコンの見方

  • :投稿した人、企業
  • :投稿日時
  • :投稿を表すタグ