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茶呈師に聞く、お茶の楽しみ方

浜松ものづくりプロジェクト運営事務局

お茶のCMやお茶の品評会でたまに聞く「茶師」。表舞台にはあまり出ない職業のため、なんかお茶に詳しそうな人、お茶をブレンドしてる人などイメージが曖昧だったりします。

今回は、「茶師」改め「茶呈師」の薗田基一さんにお茶についてのお話を聞いてきました!

茶呈師
茶ッ葉屋、基壱堂 kiichido オーナー
薗田製茶 代表

薗田 基一motokazu sonoda

 

茶師って何をする人?

簡単にいうと茶生産と製茶加工をする人。
お茶の木の葉がお茶になるまでにはいくつもの工程があります。その工程の中で、荒茶から最後の仕上げまでを行なっているのが茶師です。

荒茶をより分け、ブレンドや火入れを行うことで煎茶と呼ばれる状態にし、バランス感のある味に仕立てていくのが茶師です。

 

茶呈師とは?

茶生産と製茶加工をする茶師のお仕事。店舗でお客様にお茶の販売やお茶の提案をするお仕事。
両方の経験を積んでいく中で、
見えてきた新しいやりたいことを表現したのが茶呈師です。
お茶でおもてなしをすることを呈茶といいますよね。生産と製茶加工をする茶師。お茶のおもてなしの呈茶。
  全てを一貫してやるカテゴリーがなかったので、二つの言葉をあわせて新しいジャンルをつくってみたんです。

薗田さん
お客様の目的や思いをなにより重視すること。それはその人が求められている味を生み出すことであったり、お茶の種類やお茶の器を準備したりして場の空間も含めてお茶を楽しんでもらうことだったりします。お客様がお茶に求めていることを大切にして、私自らが表現することで自分にしかできない提案が出来るのではないかと考えています。
  よりお茶を楽しめるにはどうしたらいいのかというお手伝い、生活の営みを豊かにするお手伝いをさせていただくのが私の立ち位置だと思っています。

お茶をつくるだけでなく、一貫してお茶というものを扱うプロフェッショナルな存在が茶呈師さんなのですね!

 

煎茶をつくる

苦味、渋み、旨み、香り。
一口飲んだ時に全てを感じられ、
バランスの取れた味になっているか。
玉露は旨み、煎茶はバランスだと思いますね。

前項で「荒茶から最後の仕上げまでを行なっているのが茶師」と説明しましたが、お茶の葉は茶農家さんにより栽培され収穫された後、近くの茶工場に運び込まれ「荒茶」という状態に加工されます。
摘まれたお茶の葉をまずどうするかご存知ですか。すぐ蒸気で蒸すのだそうです。蒸すのには、大事な理由があり、酸化酵素を止めるためや茶葉を緑色に保つ目的などがあるそうですよ。緑茶を緑茶たらしめている、あの緑色はこうしてつくられていたのですね。この蒸すという工程は日本独自のものなのだそうですよ。
荒茶の状態では、茶葉の中に茎や不揃いの葉や粉(細かくなりすぎた葉)が混じっています。
その荒茶を「茶葉の選別」、「合組(ごうぐみ)」、「火入れ」をし、製茶を行なっていきます。
合組は茶葉のブレンドのことを指す専門用語です。

製茶後のお茶は煎茶と呼ばれます。煎茶は最も一般的なお茶として親しまれています。
煎茶は荒茶から余分なものを取り除いている為、雑味が少なく茶葉本来の味を楽しむことができます。

当然ながら、素人が茶葉をただ闇雲にブレンドしてもあまり美味しくはならないのだそう。
品種、蒸した時間、品質、収穫時期など加味しなくてはならない要素がお茶の葉一枚とってもたくさんあります。荒茶の茶葉から様々な情報を読み取れるのは、様々な茶葉を知り尽くした経験があるからこそ。

茶葉本来の味を組み合わせ、熱、風、電気の力を使い全体の味を引き上げていく。

その技術があるからこそ私たち日本人は、一本のお茶の木の葉から、「浅蒸し煎茶」「中蒸し煎茶」「深蒸し煎茶」「かぶせ煎茶」「玉露」「茎茶」「ほうじ茶」…など風味豊かなバリエーションでお茶を楽しむことができるのですね。

 

お茶の中に根付く旨みの文化

旨みを感じた時、そこには感動があるんですよね。
理屈ではなくて、脳で美味しいと感じる。
旨みに感動するのは日本人の文化的素養だと思います。
このお茶の旨みは残していきたいです。
作り手がいなくなってしまったら、
いずれはなくなってしまうものだから。

日本では美味しさって旨みをどれだけ引き出せるか、という旨みの文化だと思うんです。」と薗田さん。
確かに海苔、お酒、醤油、味噌など日本食に欠かせないものってどれも原材料がシンプルな印象です。素材を大事に旨みを引き出す、味として仕上げる技術は日本の伝統なんですね。

お茶をつくるということは、茶葉から旨みを引き出すということ。これは素材と会話しながらつくりだしていかなくてはならない為、マニュアルにはしきれない領域なんだそうです。

急須でお茶をいれる、ということは最近の若者の間では珍しくなってきていますよね。ペットボトルのお茶で済ませてしまうこともしばしば。
「時代の流れの中で受け入れられてきたものだから、それはそれでいいと思います。お茶は嗜好品。こうしなきゃいけないなんてルールはないから。」と薗田さん。

私は、薗田さんのいれてくださったお茶を飲んでみて、やっぱりペットボトルのお茶とは違うなと感じました。
「脳が美味しいと感じる」という感覚、なんだかわかる気がしました。ほーと腹の底から息が出るようなそんな嬉しさや温かさ。
いつも職場ではペットボトルのお茶を飲んでいますが、ちょっと一息区切りをつけたい時や、行き詰まった会議の時なんかにお茶をいれてみました。急須でいれた美味しいお茶があると場が和んで素敵ですよ。

 

お茶を楽しむこと

何よりも大事なのは、
  喜んでもらいたい、楽しみたい、
笑顔でいたい、営みをゆたかにしたい
  それを引き継いできたのがお茶の歴史であり、
お茶をつくるという工程

お茶の楽しみ方を聞きました。

茶葉をふんだんに使う

 

お茶の入れ方によってもお茶の味を変えることができるんですよ。
いいお茶ほど茶葉をふんだんにいれるのがオススメとのこと。
  一般的にご家庭などでお茶を入れるときはティースプーン1杯くらいの人が多いと思いますが、日本茶カウンセリングなどでお客様に呈茶をするときは少し多めにあえて2〜3杯ほど入れているそう。
  私はよく茶葉をケチってティースプーンの2/3ほどでよくお茶を入れますが、確かに一杯目はまだ茶葉が完全に開いてないからか少し薄い気がします。すこし多めに入れることで、一杯目から美味しいお茶が出せますよ。

茶器を楽しむ

茶器も楽しまれる方も多いようで、それによっておすすめするお茶も変えているそう。

薗田さん
骨董が好きなお客様には浅蒸しを進めますね。昔の骨董はメッシュなどもなく穴が空いているだけなので、茶葉が細かいと根詰まりしてお茶が出てこなかったりするんですよ。

これは実際に使ってみないとわからないことですね。
せっかく楽しみにしていた骨董でいざ、お茶を飲んだらお茶が出てこなかったなんてことが起きたらとっても残念だし、昔のものだから仕方ないのかなあとそのまま使い続けてしまいそう。

薗田さん「茶器より味を重視したいという方にはそれにあった茶器を提案させていただくこともありますよ」
オールマイティに使えるのは急須の中でメッシュがぐるっと帯になっているものだそうです。

私「100円均一の急須でも美味しくお茶いれられますか?」

 

100円均一のものでも葉っぱが綺麗にまわるものであれば、そこそこ美味しいお茶をいれることができるそうですよ。茶葉が回るというのは、急須にお湯を注いだ時にお湯が茶葉をうまく舞い上がらせること。ちゃんと舞い上がらせることができる構造になっていれば、茶葉が開いて美味しいお茶はができるそうですよ。

薗田さん
葉を開かせることが大事なんです。紅茶でも同じことですよね。
窮屈で幸せなものはないような気がします

確かに!お茶以外のことにも通じそうですね。

お茶にも鮮度ってあるの?

薗田さん
究極を言ってしまうと、理想はその場で煎ってもらったお茶がいちばんの理想ですね。

ずっと長く日持ちしそうな茶葉にもやはり鮮度はあるそうです。
薗田さんがオーナーを勤める茶ッ葉屋さんでは、鮮度を保った良い茶葉でお茶を楽しめるように、1〜2ヶ月以内に薗田さんが火入れした製品のみが店頭に並びます
同じく茶ッ葉屋さんの「自家焙煎茶」は注文を受けた後に焙煎を行うため、煎りたての香ばしさを味わうことができます よ!
さらに、飲み頃についてもお聞きしたところ、いれたてがいちばん美味しいとのこと。お料理も出来立てがいちばん美味しいですよね。お茶も同じで、なまものなので酸化していってしまうのでいれたてが一番!

茶葉の不思議。水とお湯で味わうお茶

お茶は熱湯ではなく少し冷ましてからいれるといい、などよく聞きますよね。それは、お茶の旨み成分であるアミノ酸は50度くらいの低めのお湯で溶け出しやすく、お茶の渋み成分であるカテキンが80度以上の熱湯で溶け出しやすいために、旨み成分が溶けやすく、苦味成分は出過ぎないほどの温度という意味で言われることが多いです。

しかし、「苦めのお茶が好き」「旨みの感じ方はなるべくまろやかな方がいい」など個々の好みがありますよね。そんな個々の好みに合わせたいれ方も提案していただけるそうです。

また、水でいれたお茶もお湯でいれたお茶とはまた異なった味わいがします。
苦味成分が溶け出さないので、口当たりの爽やかなお茶を楽しむことができます。
水出しは時間のかかるイメージがありますが…
常温の水で3分〜5分ほど。葉っぱを多く入れれば1分ほどでだすことができるそうです。
あまり、水に浸さない方が美味しいとのことですので、少し多めに茶葉を入れて短時間で出すのがオススメです。

お茶のいれ方による味の違いに触れてきましたが、お茶のいれ方や茶葉の製造方法により、お茶の味は変わるものです。甘みの強いお茶、旨味の強いお茶、甘みを引き出すお茶のいれ方、苦味を引き出すお茶のいれ方など組み合わせによって味や香り、色など無数のバリエーションを緑茶から引き出すことができます

和菓子に合うお茶、日本食に合うお茶、中華料理に合うお茶など料理に合わせてお茶を選ぶことも可能なのだそうです。

誰が飲むのか、どんな時に飲むのか、何と一緒に飲むのか…などの条件から最適なお茶を提案することもあるそうです。

 

ライフスタイルとしてのお茶

お茶は嗜好品なので、
こうしなきゃいけないというルールはない
  よりその人らしく楽しむにはどうしたらいいのか
というお手伝いをさせていただいています
  お茶でたくさんの笑顔が生まれてくれたら嬉しい

茶ッ葉屋さんの店内には綺麗な茶器や小物が。

薗田さん
昔の茶道、煎茶道は道(どう)伝統に近いと思うんです。そうじゃなくて、もう少し気軽に今の時代で楽しみやすくするにはどうすればいいのか考えています。

確かに、茶道は習い事の側面が強い気がします。住宅も和室から洋室へ、洋服も和装から洋服に…変化していくライフスタイルのなかでお茶がもたらしてくれる豊かさは昔より求められているような気がします。

薗田さん「普段、花を生けたりしますか」

映画でも話題になった「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」の世界。私も本で読みました。お茶を通して、四季を楽しんだりする様を文章を読むことで追体験し素敵だなと。四季が「春夏秋冬」の単純な四つではなくなって、細かく季節の移り変わりを感じるようになったと書いてありました。

あんな時間が持てたら素敵だなと思いつつ、慌ただしく毎日が過ぎてしまっています。
茶道は敷居が高いけど、もっと気軽に四季を楽しみたい

「お茶の文化で大切にされてきたことをもっと現代にあった形で提案していけたら面白いんじゃないか。」
そんな試みもされているそうです。

漆のような艶感のある木製花器「きゅうと」とドライフラワー。 これらのアイテムはすべて浜松でつくられたもの

「きゅうと」はピアノの塗装にも使われている術、鏡面塗装の技術を生かして作られています。

ドライフラワーはドライフラワーアレンジ デザイナーの佐藤恵さんに提案してもらったそう。

こちらは椿のペーパーフラワー。

「茶葉の原料であるチャノキはツバキ科なんですよ。」と薗田さん。

和紙でできていますが、濡れても大丈夫。
こちらの「ペーパーエデン・ウィズ・ナオロン」は椿だけでなくいろんな種類があり、手作業で形作られているそうです。
山梨県の和紙メーカー大直さんが販売しています。

「特殊な技術をもったプロフェッショナルの人と一緒にコラボすることで幅広い提案をしていけたら」 と薗田さん。新しい日本茶文化の発信に注目です。

 

茶師、茶呈師として

茶師を目指すきっかけ

「正直なところ、お茶じゃなくてもよかったんです。ただ、きっかけとチャンスをいただけたのがお茶でした。」

生まれ育ったところが茶文化のあるところだった、祖父が茶畑を持っていて製茶工場をやっていた、父方・母方の両方が茶業界など物心ついた時からお茶に囲まれて育った薗田さん
高校卒業後、様々な業種を経験していく中で「ものを真ん中に 喜び幸せをお届けしたい」と考え、20代でお茶の世界へ飛び込んだそうです。

薗田さん
こどもからおじいちゃんおばあちゃんまでずっと長いお付き合いができるものってなんだろうって考えたら案外お茶しかなかったんです。自分で選択してやっているようでいて、意外と決められていたのかな、なんて最近は思いながら…

製茶工場を営んでいた祖父の格好いい姿を手本に「自分のできることをやっていく中であんな風になれたら」とおっしゃっていました。

茶呈師としての経験

茶呈師とは
日本茶で表現を個人自ら一貫して従事する人。   また、内容によっては
他分野の専門家も交え行動することも得意とする人。

昨年、天皇皇后両陛下が浜松にご訪問された際のお食事のお茶を製茶、呈茶された薗田さん。(平成30年11月28日、静岡行幸啓御会食)

 

お食事は、「地産地消」を掲げ、地元産の食材を活用し「浜松料理」を提供する飲食店「じねん」など5店舗を経営するJINEN GROUP代表の秋元健一さんが料理番と配膳番をされました。

秋元さんからのお声かけにより、お茶も天皇皇后両陛下にお召し上がり頂くことが叶ったようです。(JINEN GROUPサイト http://www.jinen-g.jp/)

 

「浜松パワーフードに合うお茶をお食事の前後に淹れる」

 

天皇皇后両陛下の御会食ですので、なかなか口外出来ない内容も多く、場所も時間も前日まで分からない状態での呈茶だったそうです。
料理番と配膳番を務められた秋元さんとのお話や、お店でお食事をいただき、
「素材そのものの良さや魅力をひきだす」ことや、愛にあふれる秋元さんの料理に合うようなお茶を考えて仕上げたそうです。

 

「地元らしさ、あったかみ、ぬくもり、愛」をお茶で表現するとどんな形になるだろうか。

茶器の提案も茶呈師の仕事。遠州地域の器で用意しようと決め、湯呑は森町の鈴木進さん、茶宅と蓋は日下部善昭さんにお願いをしてつくったそうですよ。

数日前に構成が変更になることもあり、それに合わせて茶器やお茶をコーディネイトしていたので全て新しいお料理やスタイルに合わせ変えることもしばしば。
湯呑も手作りのため大きさや数にも限りがあり、数が足りるか心配だったそうですが、ちょうど数が揃っていてびっくり!無事、揃えることができたそうです。

茶宅と蓋はなんと天竜の御神木!日下部さんがそれを手にした時、残された猶予は残り3日!
器を見ながら一つひとつ丁寧に全員分をなんとか3日で日下部さんがつくりあげたそうです。

薗田さんのお人柄が成せることだとは思いますが、人のご縁、繋がりでここまでスムーズにコトが運ぶというのは浜松らしいですね。

薗田さん
すごく勉強になりましたね。生きててよかったと思いました。ご縁に感謝です。もう死んでもいいぐらいに嬉しかった 笑 でも、これがスタートですものね。頑張ります。

新しい日本茶のかたちをつくる茶呈師 薗田さん。ますますのご活躍に注目です!

ほッと編集後記 ほッと編集後記

「お茶を楽しむ」ってなんだろうか。
お茶は嗜好品。理解はしていますが、改めて言われるとハッとします。

 

嗜好品とは栄養摂取を目的としないもの。香味や刺激によってもたらされる何かを求めて私たちは嗜好品を口にします。四大嗜好品である、酒・茶・コーヒー・タバコ。これらに共通して「ある」心理的効果をご存知ですか。

 

リラックス効果」と「コミュニケーションの促進」なんだそうです。しかも、日本茶のすごいところは栄養摂取が目的ではないけど健康にいい要素がたっぷりなところ

 

作業の合間に飲むお茶、みんなとお茶菓子をつまみながら飲むお茶、どれも私たちに心のゆとりやほんの少しの前向きさを生み出してくれる存在なような気がします。
お茶を楽しむってことは、お茶を意図的に日常に取り込んでいくことなのかなと思いました。
日常のちょっとしたタイミングをより素敵にするためにお茶の力を借りる。
豪勢すぎない特別感を持つ「茶葉でいれたお茶」は日常にちょうどいい贅沢な時間をお手伝いしてくれる気がします。


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